2018年10月15日

メンタルの問題を蔓延・慢性化させないためには

メンタルヘルスの問題を蔓延化させず、減らすためには、いろいろできることがあると思う
のですが、それがあまり知られずに野放しになっている印象があります。
そこで、ここでは個人でできること、できないことを含め、何ができるのか、何がなされる
べきなのか、について書いてみたいと思います。

産後うつを予防する
子どもの健康のため、やはり大切になってくるのは母子保健です。もちろん、子どものために
母親や親は犠牲にならなければならないとか、絶対健康でなければならないとかは言いませんが、
特に乳幼児期は子どもが人生で「最初の人」である母親(や、それに代わる養育者)と関係
(愛着関係と言います)を築く大切な時期です。この時期に母親がうつになってしまうと、
うつをそのまま子どもに受け渡しているような状態になってしまいます。
産前やそれ以前からのメンタル面での健康管理、家族や職場など周りの協力や理解、医療や
保健・保育関係者のサポート、社会の風潮など含め、母親がうつになりにくく、楽しくお産や
育児などができることが重要になってきます。

危機介入を適切にする
統合失調症等、重篤な精神障害の治療に関して、最近鎮静作用の強い薬を使いすぎること
(長期使用も含め)はむしろ病気の慢性化につながるという研究結果も出てきています。
と同時に、オープンダイアローグなどのアプローチで知られるように、家族の中で危機が
あるとき、それに適切に早期に介入することで、まず最初の精神病エピソードを食い止め、
そもそも発病や入院につながらないようにすることも可能だという方法が実践されています。
これは理にかなったことで、なぜならばそうした精神障害の場合、親子関係や家族関係が
密接にからんでいることが多いからです。たとえ病院で治療して退院できたとしても、
同じ家族のところに戻ることでまたトラブルが起こる可能性も高く、また自立したり、
ほかに世話をしてくれる人を見つけるのも困難です。
また、薬だけでは対症療法に過ぎないので、症状として出てくる背後の状況や原因は手つかずの
ままになってしまいます。なので、危機や発病のときに適切なコミュニケーションの改善を
図れるようにするというのは、当を得ているのです。

(以下、字幕翻訳に関わった「オープンダイアローグ(開かれた対話)」のビデオです。
https://www.youtube.com/watch?v=_i5GmtdHKTM

薬漬けにせず、心理療法を活用する
抗うつ剤や抗不安剤などは、不快な心身の症状を和らげてくれます。
何かの出来事に対しうつになってしまったというような、「反応性のうつ」の場合や、
比較的短期の不安やうつの場合、薬を摂っている数ヶ月くらいの間に治ってしまった
ということもありますが、もっと長期の問題や複雑な問題の場合、ただ薬を摂っている
だけでなく症状をコントロールすることを覚えたり、より根本的に治療することも
必要になってきます。日本ではまたまだ、心理的治療が薬と併用されきっていないと
言えます。
また頓服などは飲むとわりにすぐ効くこともあるため、依存性がついてしまうことも
あるのです。
それに対し心理療法では考え方や感じ方、人間関係のあり方、生活のパターンなどを見直し、
薬に頼らなくても症状をコントロールしたり、軽減したりすることを学ぶことができます。
うつや不安にはその症状を生み出している「根っこ」のようなものがある場合もあり、
それが分かれば根治することも夢ではありません。またそこまで行かなくても、日常で
経験するストレスにより効果的に対処し、ネガティブな反応(うつ・不安症状など)を
しにくくなるようになっていきます。
セラピスト(カウンセラー)に対し依存してしまうことを心配する人もいるのですが、
セラピストは自立を促していきますし、また自立以前に、以前の関係(たいていは親子関係)
で得られなかった依存や信頼の関係を経験することが必要な場合も少なくありません。
「依存=悪」ではなく、治療や回復のプロセスの一部であることもあるのです。

トラウマ、虐待、DV等に対処し、予防する
虐待、DVや暴力などを含むいわゆるトラウマ的体験は、メンタルの障害に結びつきやすい
ものです。トラウマを経験した人がかならずPTSDなどの障害を起こすわけではありませんが、
逆に障害を持っている人はたいていなんらかのトラウマを過去に抱えていることが多い
のです。
また、そうした家庭内や人間関係のトラブルでなくても、地震、豪雨災害など自然災害
によるトラウマもメンタルな問題を引き起こします。
こうした原因と症状との「結びつき」に気づいたら治療を受けることもその後のこころの
健康のために必要ですし、また可能な限りこうしたトラウマとなる出来事を起こさせない
ような予防も大切です。自然災害などは仕方のない面もあるのかもしれませんが、虐待や
暴力などの予防はそうした面でも意味があるのです。

以上に挙げたものは非常に大きい課題ばかりではあると思うのですが、同時に以前と比べ、
社会の中でいろいろポジティブな動きも散見されるようになってきていると思います。
オープンマインドではこうした諸々の課題に気を配りつつ、カウンセリングに来られる方
それぞれにとってベストは何なのか、常に模索しつつもできる限りを提供していきます。