2018年11月20日

共感力を高めることと、その方法や効果

オープンマインドでは、「共感」をとても大切なことと考えています。
中には、共感することが時間やエネルギーの無駄のように言っている人もいますが、
それは目的によるでしょう(というかこういう発言は正直、理解できませんが・・・)。
オープンマインドでは、あくまで他者を理解しようとすること、相手はある程度
理解してもらったことにより、自己理解や自信を得て、より広い世界で生きていける
ようになる・・・ということをサポートしています。そのため、共感は欠かせません。

「ある程度」といきなり書いてしまったのは、共感にはそれなりに限界があることも
事実だからです。いきなり限界から話すのも何ですが、たとえば長期の(何年にも
及ぶ)心理療法で共感や理解のために費やされるエネルギーがどれくらいのものか、
おそらく想像もつかないでしょう。しかしその果てに、相手(クライエント、患者)は
「分かってもらった」というたしかな確信を持って、生きていくことができます。

「限界」とされるのはたとえば男の女の違いといったこと。これは、女性カウンセラー
が男性クライエントと(または逆に男性カウンセラーが女性クライエントと)効果的な
カウンセリングや心理療法ができない、と言っているのではなく、やはり男女の違い
のため「限界はある」(同性に比べ)と言っているのです。
LGBTQと異性愛者の間にも、そうしたギャップはあるかもしれません。
また、オープンマインドにはある程度の比率で(10~20%くらいでしょうか)外国人の
クライエントがいるのですが、「悩み」「人間関係」「家庭」「仕事」などある程度
万国共通の部分も多いものの、その人の文化バックグラウンドや、人種・民族的経験
などはなかなか簡単に推し量れるものではなく、経験からその辺にも「限界」を
感じはします。
しかし、世の中あえて文化やバックグラウンドの違う人と接してみよう、という人も
いるわけで(自分の含め)、そこでできるベストをやれればいいし、またそうした
関係性から生じるメリットもあると思うのです。

話がいきなり「限界」のことになりましたが、それでは共感力というのはどうやって
身についていくのでしょうか?
赤ちゃん~幼児はよく指さしますが(言葉がまだできないので、その代わりとも
言えますが、発語に至る上でとても大切なのがこの「指差し」なのです!)、共感
する親はその方向に目線と注意を向けます。”joint attention”と呼ばれますが、
多分それについて会話をするでしょう。
やがてそれは「同じ事柄・出来事にいっしょに注意を向け、感想や考えを話す」に
発展していくでしょうが、これが共感のベースの一つではないでしょうか。
心理療法ではやはりある経験や出来事にいっしょに注意を向け、そこにある状況や
気持ちなどを詳しく見ていきます。

これは中・上級バージョンですが、そこまで行かない場合。話や言葉に表れている
困難・悩みなどに、そこにあるだろう気持ち(不満、イライラ、悲しみ、怒り、
憤り、やるせなさ、等々・・・)を述べていくというのは、カウンセラーの重要な
役割となります。だいたいが気持ちと出来事(や考え)がうまくマッチしていない
人が多いからです。

精神力動的アプローチの場合は、両親に関わる思いや気持ち(いわゆる「転移」)
の部分に気づき、働きかけていくことで、偏った気持ちから徐々に脱却し、共感
する力が向上すると言われています。
実際、一応外に出て働いたりしていても、育った両親(家庭)との間で作られた
感情的モデルのようなものの中でのみ機能している人も少なくないように思って
います。それだと相手がもっと違う気持ちや思惑を持っているかも知れない、
ということに思いが至らないままで、人間関係の発展に限界が出てきてしまいます。

それではなんのために共感力を高めるのでしょうか? 共感力を高めるとどんな
ことが期待できるのでしょうか?

まず、最初の方に書いたように、そもそも自分が十分に理解できていなかったり、
自信がなかったりする人にとっては、共感してもらうことによって自己理解が深まり、
自分はこれでいいんだと思えるようになり(「自己受容」と言いますが・・・)、
それにつれて自信も出てくると思います。
カウンセラーも人ですから、クライエントの立場からすると一方的に「共感して
もらう」だけでなく、「共感する」という動きも出てきます。こうして、関係性の
理解も高まっていくのです。

共感力が身につくと人間関係が改善する、ということを聞いたことがあるかと
思いますが、その通りではないでしょうか。
たとえばなかなか思うとおりに動いてくれない部下や子どもなどがいたとき、
頭ごなしに叱ったりコントロールしたらまず関係は悪くなりますが、「なぜ、
そうしているのか? どんな気持ちがあるのか?」をまず共感して理解すると、
相手は分かってもらったというベースがあり、次の行動がより柔軟に取れるように
なります。
共感力があることにより、「相手がどうしてこうしているのか?」や、「自分
だったら、こういうときこう思うだろうな」といったことが想像しやすくなり、
その分人間関係一般も円滑に進むのです。

今の世の中には残念ながらいろいろ殺伐としたことや、ドライに過ぎることも
多いですが、「共感」の力をもって少しでも人間的な、優しいエネルギーのある
空間が増えていけば、というのがオープンマインドの願いです。