2019年01月23日

臨床心理学とポジティブ心理学

ここ数年、ポジティブ心理学についてよく聞くと思います。臨床心理学とポジティブ心理学は、どういう関係にあるのでしょうか?

臨床心理学は、アメリカでは第二次世界大戦後急速に発展しています。そのさらに源流は、ヨーロッパで生まれた精神分析(精神分析学)です。もともと、なんらかの身体的症状があったり、「病理」があるのを、改善または治癒するようにと発展してきました。

また、精神科診断と結びついた「医療モデル(medical model)」により、病的な側面、症状に焦点を当て、その治療をするという精神科と結びついた形での臨床心理のあり方もありました。

それらに対し、ごくざっくり言うと病気や病理、症状やネガティブな部分ばかり見て扱っているのではなく、ポジティブな側面を主体として見ていこうという動きがポジティブ心理学です。しかし、当然にして物事は陰陽両面から成り立っているため、純粋にポジティブしか見ないポジティブ心理学は本道ではない、と言えます。特に治療プロセスの中で陰性感情(ネガティブな感情)のプロセスはとても重要なものです。

また、病気やネガティブな体験、ネガティブな感情に焦点を当てがちと思われてきた伝統的な心理学(精神分析やより世代の古い臨床心理学など)も、治療者(カウンセラー、セラピストなど)の受容的な姿勢やポジティブな態度などと組み合わされてきたわけで、まったくネガティブ一辺倒だというのは実際を知らない誤解であると言えます。

実際のセッションの中でも、単純にネガティブな体験・感情だけに焦点を当て続ける、ということはありません。人はこころの中(無意識)にあるものに圧倒されないように防衛を使います。その状態に反してネガティブなことだけをプロセスすることなど不可能ですし、そんなことをしたら即うつになってしまいます。ネガティブなものは常にポジティブなものと組み合わせ、クライエントには「より良く」感じられる・過ごせるような方法を考えてもらい、自分で出てこなければ治療者がそれを補います。そのようにしてバランスを取りながら進めていくのが実際のカウンセリング・心理療法のプロセスなのです。