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2019年03月06日

ナルシシズム(自己愛)の発達上での必要性と病的なナルシシズム

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「ナルシシズム(自己愛)」と聞くと、どういうイメージがあるでしょうか。おそらくポジティブというよりネガティブ、「自己中心的な」、あるいは「自己陶酔」に近いイメージを抱かれる方が多いのではないでしょうか。





ナルシシズムは、精神分析学では重要な概念で、元々精神分析の創始者であるフロイトが提唱したものです。全体としてはかならずしもネガティブなものではなく、子ども(通常6歳くらいまでと考えていいでしょうか)が、親などの愛情や注目を浴びたがり、かつ相手の気持ちや動機をあまり理解しない、といった未熟な状態を指します。この段階では、子どものこころの健康な発達のためにナルシシズムは必要であり、「病的な」ものではありません。よく「甘やかし」や「抱っこしすぎ」を懸念したり、避けようとすることがありますが、特に子どもが幼い頃は甘えやナルシシズムは必要不可欠なものであり、むしろその欠如が先々病的なナルシシズムへと発展してしまうと考えられます。





しかし、付言すれば幼い子どもでも親など大人や周りの人の気持ちや立場が分かっていないというわけではなく、彼らのキャパシティの範囲内でちゃんと「相手」の存在を認識し、反応しているということが近年の「こころの理論」など、発達心理学を中心とした分野での研究で次々と明らかにされてきています。





それでは、「病的な」ナルシシズムはどういうものかと言うと、前述の通りそれが必要な時期に愛情や注目を十分に浴びなかったということがあります。いわゆる神経症は、だいたいナルシシズムの要素を持っていると思われますが、病的なナルシシズムとして代表的なのは「自己愛的人格障害」や「反社会的人格障害」でしょう。これらのタイプは、自分の利益や気持ち、欲望などを相手の気持ちや立場などを省みずに優先させ、なおかつ共感や反省をせず、罪悪感も持たないということで知られており、反社会的人格の延長として犯罪行為など、反社会的行為をする可能性も高くなります。





近年、日本でも「反社会的人格」が知られるようになり、たとえば企業のトップなど、成功している人にも多いと言われています。事業で成功するには、相手の不利やネガティブな気持ちなど顧みずに自分の利益になることをやることは、たしかに必要とされることですが、状況や相手などにもよるでしょう。逆に企業のトップや成功した人でも、むしろ社会奉仕的な態度をされている方もおり、一概に「トップだから」と言うことはできないということを、付け加えておかないとならないでしょう。





最近世間を騒がせたものとしては、日産のゴーン元会長の件があります。詳しい経緯をすべてフォローしているわけではないのですが、ゴーンは自己愛的人格障害なのでは、とつい思ってしまいます。欧米でなんらかの理由で周囲と摩擦や問題を起こし、日本に流れてくる力のある人も多いのでは、と実は以前から懸念しています。なぜなら、心理学後進国と言える日本では、そうした問題が「問題」とされにくく、見逃されやすいからです。人種や出身にもよると思いますが、「外人」であるというだけでチヤホヤされる傾向もありますね。こうしたことはすべて、病的なナルシシズムが許される、見逃されることにもつながっていってしまいます。





私が心理学や心理療法を学んだニューヨークでは、自己愛的な(多く成功した)夫に愛想を尽かした妻が、離婚すると脅して精神分析や心理療法に夫を送り込んでくるといった例があることを、ときどき文献などで読みますが、日本ではまだそうしたことは稀でしょう。心理的治療は、もちろん恵まれない、「病気の」人にも必要ですが、リーダーや力を持った人にこそ、社会や他者に与える影響が大きいこともあり、必要なのです。今後リーダーになっていく人にとっても、対人関係などを学ぶ適切な場であると言えます。チューリッヒのユング研究所のお膝元のビジネススクールでは、精神分析がカリキュラムに組み込まれているという話を彼の地で学んだ同僚に聞いたこともありますが、日本では夢の夢というか、現時点ではまずあり得ない発想でしょう。日本ではまだまだ男性優位社会は守られており、女性は経済的にも立場が弱く、男性に依存していることが多いのが残念ながら現状です。女性に病的に自己愛的な人がいないわけではないですが、こうしたジェンダー的構造が改善されない限り、病的なナルシシズムは日本に蔓延し、ビジネス、教育、医療、福祉、家庭など、いろいろな場所で問題を引き起こしてしまうのではないでしょうか。





また、ジェンダーという側面から見ても、日本ではまだまだ男性優位社会は守られており、女性は経済的にも立場が弱く、男性に依存していることが多いのが残念ながら現状です。女性に病的に自己愛的な人がいないわけではないですが、こうしたジェンダー的構造が改善されない限り、病的なナルシシズムは日本に蔓延し、ビジネス、教育、医療、福祉、家庭など、いろいろな場所で問題を引き起こしてしまうのではないでしょうか。社会構造はすぐには変えられないことですが、カウンセリングや心理療法は一個人の力でできることであり、しかしながらその力は、単に「二人(クライアントと治療者)」というよりは大きな可能性を秘めていると思っており、だからこそ心理療法をやっているというのがあります。


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