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2019年05月08日

「人」は「役割」より大きい

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ときどき、何をきっかけに自分の思考が動き出しているのか、始まりが分からないときがありますが、多分教育や受験のことなどを漠然と考えていて「役割」(社会的役割、social role)に思い当たったのかと思います。日本文化は役割意識の強い文化で、そのためいろいろな弊害があると言わなければなりません。





例としてはたとえば親であるという「役割」。誰かがいみじくも、人は親に生まれるわけではない、と言っていましたがその通りで、子どもが生まれるから親になるわけですし、子どもが巣立ってくれれば、「親」でなくなるわけではないですが、親としての「役割」はほぼ終わるはずなのです。世間を見渡すと、親としての役割を終えないまま、子どもを抱き込んでいる(愛情、金銭など)場合も多く見かけられますが。そうした親子の癒着関係も、メンタル的に見ればあまり望ましいことではないと言えます。





世間でも「親」としてこうあるべき、という期待やイメージは強く、たとえば学校などはそうしたことを、細々したことをやったり用意したり、という形で果たすように期待したり、場合によっては圧力をかけてきたりします。電車の中で子どもが泣いたり騒いだりしたときに親がにらまれるとすれば(言ってみれば子どもの機嫌は親の責任を超えた部分もあるのですが・・・)、それは親として適切に子どもをあやりたりなだめたりする責任を果たしていない、ということへの視線でしょう。この場合、にらむ方は「あるべき」だけを意識しており、子どもが泣いてしまってオロオロしているその人の部分へは、同情はむけられていないことになります。





文化や環境によっては、子どもは泣いたり騒いだりするものだという理解がもっとあり、そうしたネガティブな視線を向けられないところもあります。また、人が「親」として果たすべきことのほかにやるべきことややりたいことがあったり、人格のほかの部分やきまぐれさえも存在するということをもっと了解している場合もあります。この点、日本ではときとして親になったらそれがすべて、100%であると思われているように見えるときがあり、空恐ろしいのです。





これは、ユング心理学に立ち返って言えば「ペルソナ」ということに近いと言えます。社会や外面に向けて作ったはずの「顔」がさらにこころの全体を支配してしまう、ということです。そうなるとこころは流動性を失い、ほかの動き方や考え方をする余地はなくなり硬直性を増します。日本で、多くの場合社会や組織のあり方がペルソナ的なものや役割を促進させ、その他の人格の部分をないことにしたり場合によっては事実上殺してしまったりしているようなのは、心理的には本当に警鐘を鳴らすべき現象です。





別の例として、ネットで読んだものですが(なので信憑性が低い・・・と思われる向きもあるでしょうが、話としては臨床をしてきた身としては大いにあるというか、少なくないのではと思われるような例です)、医者ばかりに家に生まれ、大学受験に失敗したために父親からひどく責められたことをきっかけに摂食障害になり、勘当されたも同然で風俗で働いて生活を支えてきたものの、年齢が上がり、貧困状態にあるという女性の話です。実家は裕福なのですが、援助は得られないということでした。この場合、家族病理として捉えることもできますが、摂食障害となった女性よりはむしろ父親が病理を抱えており、また「医者の妻」としてそれに介入できない母親の病理と言うこともできるでしょう。父親=医者はペルソナや役割の問題に侵されていると思われ、また高学歴というアイデンティティの一部分にしがみついていると仮定することができるでしょう。





日本では、と言いましたがそれでは海外ではこうした問題がないのか? というと決してそんなことはないのですが、日本の場合、「集団主義的 collectivistic」であり、個より社会や集団の「是」が優先されがちなのでより深刻になりやすいと言えます。海外でも、やはり役割意識が強いであろう医療者や先生、政治家など、また軍隊などの組織ではそもそも「反する」ということへの容認は低いでしょうし、そうした環境ではペルソナの問題は起こりやすい(場合によっては望ましくすらある)と言えます。ただ、より個人主義的で個人の選択の自由があったり、パートナーシップなどの中でより自分らしい時間を過ごせたりすることで、人格のいわば全体性を回復することができ、それは日本でも変わりありません。





最近、日本の社会で虐待や性犯罪、体罰などに関する意識が上がってきており、結果としてどちらかというと救済策がないまま厳罰化する方に向かっているのは、憂慮すべきものと思っています。元来、心理的援助などがそうした救済策になるはずなのですが、多くの人がそれを知らず、また効果があるとも思っておらず、また精神科やカウンセリングに通うことなどもスティグマが強いままになってしまっています。働き方改革や女性の社会進出なども合わせると、非常に四方八方から要求の高い状況の中で私たちは生きており、ストレスも多く、また「間違う」余地も少ないといった、生きにくい世の中になってしまっています。カウンセラーとしては、来てくださる方々にせめてものオアシスを提供したいと思っています。


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