2019年05月18日

劇場としてのセラピー

セラピー(カウンセリング)は、守秘義務で守られた状態で、ある人(クライアント)がなにを話してもいい空間です。セラピスト(カウンセラー)は、全身でその人の話を聞きます。ときには空間は「変質」し、あたかもその人の「心の中の空間」に入っているかのように感じられることもある、デリケートな空間です。過去の出来事がいわば「再現」されることもあります。そのデリケートさを守ろうとするために、安全な空間となります。

セラピーに来る人は、いろいろな立場の人ですが、社会的弱者であることも多いです。表だって活躍しているというより、自分の力を発揮できていないからこそサポートや援助を求めてくるのでしょう。そうした人であっても、セラピーの「劇場」の中では、主人公となることができます。その空間や時間、対人関係を体験し、また日常で起こっている、あるいは過去に起こった出来事にまつわる気持ちや考えを話します。それは、ナラティブ(語り)と捉えることもできますし、また対話と捉えることもできます。そうして「主人公体験」を重ねていくうちに、だんだんと自分を確立し、力を増し、セラピーの外でも主体として活発に生きていけるようになるのです。