2019年05月30日

キャリアと対人関係の関係

人の人生には、おおざっぱに分けて「自分が充実する」と「対人関係が充実する」の2つのエリアがあると言えます。「自分が充実する」は「なにをやっていくか?」、すなわちキャリアや仕事、ライフワークなど、「対人関係」の方は家族や友人関係などになります。

この2つが無関係でないのは、分かっていただけるでしょうか? 一口に「キャリア」と言っても、仮に専業主婦(主夫)を選んだ場合、家事などはあるにしても家族の面倒を見ること(子育てや介護も含む)が中心になりがちでしょう。逆に起業・独立、アーティストや作家など、自分を頼みとするようなキャリアを選んだとしても、あまりに家族や友人を顧みないようだと充実感や幸福感を感じることは難しいのではないでしょうか。

私が心理学・心理療法を学んだニューヨークでは、仕事的には成功しているのだけれども、家族をないがしろにしてきたために家族に促されるようにして心理療法(精神分析など)に来る、といったケースがときどき本などに載っていました。やはりどんなに成功して軌道に乗っていようとも、家族という基盤なしでは人はなかなか難しいとも言えます

職業選択にしても、対人関係は無関係ではありません。典型的には家業の場合や会社を継ぐ、などの場合です。このような場合はどうしても親との関係や、それまでの家族のあり肩などと無縁ではありません。葛藤も合ったりするでしょうし、敢えて継ぐという場合や、継ぎたくないから合えてべつのことをするという場合もあるでしょう。おいしゃさんは医者の家系から出ていることが多いですし、政治家や音楽家なども、親がそうだったというのをよく聞く分野です。

職業選択の過程で、人や人との出会いが影響している場合もあります。仮に職業を選んでいくのが思春期~大学~社会人初期、というように考えてみると、その間会った先生や先輩、親戚の人などから影響を受けたり、憧れたりしてある職業を選ぶという場合があります。直接「人」ではなく、本や映画などというケースもあるかもしれません。いずれにせよキャリアについてのアイデンティティが形成されるべき時期に、そういう出会いがあった人は幸せであると言えます。

しかし何かと変化の多いこの時代、最初に選んだ職業が「絶対」と言えるわけでもなく、転職したりキャリアチェンジをしたり、いったん学び直したりということもあるのではないでしょうか。

自分で主体的に選んだつもりはないとか、気がついたらやっていた、などという場合、職場のコミュニティに帰属感があったり、家族が支えであるというようなことがあったりしないと、仕事がつまらないとか嫌だというときに、よりストレスを感じやすいのではないでしょうか。ここでも仕事は人生の一側面で、対人関係によって支えられていると言えるのです。

一般に、長期間の信頼できる関係(家族、結婚、親友、ビジネスなどのパートナーシップ、愛着関係、等々)はより安定感を増し、コミットを高くすると言います。精神的なサポートがある場合、より困難なミッション(起業、ステップアップ、アーティストとしてのキャリアなど)にもチャレンジして、かつやり続けることがしやすくなります。なぜかと言うと、仮に失敗したりしても戻っていく場所、なぐさめてくれる人などがいるからでしょう。心理カウンセリングという「対人関係」を使ったメソッドが、単に対人関係全般だけでなくキャリア面でもプラスに働き得るのは、こうした理由からでもあるのです。