2019年12月20日

「仕事だけではない豊かな生活~真のワークライフバランスを目指して

日本で「働き方」が問題とされたのは今に始まったことではなく、数十年経ってまた「働き方改革」と言われている今のようです。仕事はたしかに人生において(特に大人・成人の人生において)大切なことですが、人生にはそれ以外の部分も多くあります。「好きを仕事に」や、「やりがい」が叫ばれる日本ですが、聞いた話だとイギリスなどではふつうの働く人(労働者)はあまり多くを仕事に求めないそうです。あくまで生活の手段、収入源としてドライに捉えている人が多いということで、それくらいで済まされた方が、かえって健全であると言えるかもしれません。

また、ドイツなどだと週あたりの労働時間が決められており、それを超えると使える超過時間から引かれていき、マックスを突破すると本人(労働者、従業員)ではなく上司がペナルティを食らうという仕組みになっているのだそうです。日本でもだんだんとこれに近い方式になっている職場もあるようですが、一定時間を超えて絶対働けない仕組みになっているということのようです。

少なくとも、自分や家族を犠牲にしてしまうほど、仕事の重要度が増したり、仕事一筋になってしまうのは、本人またはシステム自体に問題があると言わざるを得ません。雇用契約によって、従業員は決められた場所で決められた時間働かなければならないということはありますが、それを超えて働く義務はないと言えます。最終的には「自らを助く」のは自分であるとも言えます。ただ、企業や官庁側でそれを超えた「ブラックな」働き方を期待しているのであれば(そういう仕組みを作っているのであれば)、やはりそれは人生の本質と食い違っていると言わなければならないでしょう。

ワークライフバランスというと、どちらかというと女性の、「どうやって仕事と家事(子育て)」を両立させるか、のように考えられがちですが、男性にも無関係ではなく、むしろ男性の方がそこをしっかりと考え、仕事に呑まれないようにする必要があるのかもしれません。仕事ができること、成功していくこと、収入がある(多い)ことはたしかに誇りに思えることでしょうが、自分のアイデンティティをそこだけに頼っていないでしょうか? だとしたら、どこかで見直すべき時期がやってくるのではないかと思います。

仕事をしっかりしている女性の場合、たとえば結婚、妊娠、子どもが生まれる、その次の子どもが生まれる・・・といったライフ・イベントや、またはそれを「想定する」ことによって振り返るチャンスが豊富にあると言えますが、男性にはあまりそれがなく、子どもの頃は「勉強していれば(できていれば)いい」、大人になってからは「仕事第一」になりがちで、仕事以外の自己というのがあまり育っていない場合もあるのではないかと思います。

カウンセリングに来られる方を見る限り、多くかかえているのは人生の中のアンバランスということです。たしかにオールラウンドで何もかもバランスよくほどほどに上手く行っているという人はおそらく多くなく、どこかで悩みや欠点~仕事はできるけれど、なかなか結婚できない、家庭は持てたけれど仕事ができない、仕事はしているけれどお金にならない、等々~を抱えている方が多いのではないでしょうか。すべて「克服」する必要はないにせよ、やはりある程度やっていけるバランスを達成し、維持することは大切なことだと思います。