2020年09月30日

同じ「過ち」を繰り返してしまうのは?

なくて七癖、などと言いますが、私たちはみんななんらかのクセなり習慣なり悪癖なりを持ち合わせています。なかなかやめられないクセや習慣というのは、私たちを人間らしくするものでもありますが、それが積み重なって人生の方向が狂ってしまったり、心身の健康が損なわれてしまうようだと、やはりその習慣は改めないといけない、ということになるでしょう。「依存行動」「依存症」と呼ばれるものは、まさにそういったものだと言えます。

依存というのは、その人の好き嫌いを表すものでもあります。依存行動となるのは、好きなことや、やめられないこと、なんとなくやってしまうことなどです。たとえば、過食やダイエットが問題となりやすいのは、食べ物というのがありふれたものであると同時に、手に入りやすくもあるからです。食べ物や食べることには、ドラッグのような違法性もありません。同じ「食べる」と言っても、額に汗して作ったり採ったり(獲ったり)しなければならない場合は、そんなに気軽に食べることもできない気がします。

精神分析的な考え方では、「繰り返す」のはそれをやめられないから、そのことを通じてマスターしたいから、ということになっています。なんらかのトラウマや傷を受けたときに、それこそ壊れたレコードのように(やや時代遅れですが・・・)リピートして、それに自分のコントロールを及ぼせるようにしたいのです。繰り返すことで、だんだんと自覚が高まっていく場合もありますが、心理療法が有効なのは、繰り返しているということに客観的な第三者(セラピスト、カウンセラー)が気づき指摘してくれるからです。

繰り返される行動(場合によっては「強迫行動」=やめたいのにやめられない行動、ということも)は、自分の一部であり、よくこころに浮かびがちな考えやイメージ、感情などとも共通して「自分のもの」です。そのものとの関係性を変えていくことで、より選択肢が広がり自由が得られると言えるでしょう。音楽やスポーツ、ダンスなどを真剣にやったことがある人ならば、自分の「クセ」というのがどうしてもあるということをご存じでしょう。それはプロレベルになっても同じですが、まったく消去することは不可能でもあまり気にしないで済むところまでは持っていくことができるのです。心理面や行動のクセについても、同じことが言えるのではないかと思います。