2019年09月15日

未熟児の誕生というストレス

赤ちゃんの誕生というと新しい生命の誕生として、喜びのイメージがありますが、そうとばかりは限らないようです。オープンマインドではこれまでに知れている限り未熟児として生まれたクライアントさんが2名はおり、その関係でちょっと調べ物をしてみました。それというのもこのクライアントさんたちが、親子関係がぎくしゃくしていたり、自己イメージがネガティブだったりということがあったためです。一人の方は中学生だったのですが、お母さんの話によると生まれたときは手のひらくらいの大きさしかなかったんだということでした。

調べてみると、未熟児の誕生は親御さん(特に母親)にとってかなりのストレスを伴う体験であり、不安やうつ、場合によってはPTSD的な症状も伴う、と書いてある記事に行き当たりました。通常の臨月まで行けたお産であれば、お産自体エネルギーを要することですが生まれた子どもをそのまま抱っこしたりお世話したりできるという喜びがありますが、未熟児はなんらかの妊娠継続や出産の困難を伴い、赤ちゃんは集中治療室に話され入院する、という経過を辿ります。

ここで問題になってくるのは未熟児の出産という体験そのものもですが、愛着関係の形成が阻害されるということもあるでしょう。愛着関係とは、母子の関係を代表とする、子どもが安心でき、そこをベース(基地)として冒険したり成長したりできるような関係を言いますが、単に親が「愛したい」「愛さなければ」と思っている以上に、相互作用のようなものが大切なのだと思います。すなわち、赤ちゃんを抱っこできたり、やがては赤ちゃんがほほえんだりするここと、また日々接していることなどがたいせつになってきます。

入院や治療はもちろん未熟児が生き延びるために必要なことです。しかし、その間親は我が子が生き延びるかどうか一喜一憂し、かつ関係を形成するまでもなく分離の状態を体験しているのです。

その辺については、まだ調べておらずデータもあるかも分からないのですが、いわゆる「産後うつ」のうち一定の割合はこの未熟児の誕生から来ているのでは、と思いました。産後うつの場合と同様心理的介入は可能ですし、効果的だと思われるのでぜひ積極的に使われるようになってほしいものです。

参考文献: Inonio, C., Colombo, C., Brazzoduro, V., Mascheroni, E., Confalonieri, E., Castoldi, F. & Lista, G. (2016). Mothers and Fathers in NICU: The Impact of Preterm Birth on Parental Distress. European Journal of Psychology, 12(4), 604-621.