2020年06月14日

オンラインになっても、大切なこと

新型コロナウィルスにより、外出自粛要請や緊急事態宣言が出ていたのが、だんだんと解除になり「日常」が少しずつ戻りつつあります。とは言え、マスク必須、消毒、ソーシャルディスタンスなど、まだまだ「元通りでない」ことをいろいろ気をつけながらの解除となっているのが現状です。いくつかカフェやレストランなどにも行きましたが、席が半分間引きされたような状態で、稼働率ほぼ50%くらいなのかな・・・という感じでした。

さて、新型コロナウィルスの脅威により急速に進んできたのが「オンライン化」です。それまでも、オンラインに熱心な業種や企業はあったかと思うのですが、どちらかというと「立った」振る舞いであり、一般的にはまだまだ、という感じだったのではないでしょうか。それがいまや「新常識」、「これがなければ生き残れない」に近いところまで来てしまっています。

カウンセリング業界も例外ではないと言えるかもしれません。以前から電話カウンセリングという形態はあったものの、カウンセリングはやはり対面が「主流」「正統」であり、近年立ち上がってきたオンラインカウンセリングはむしろ「亜流」だったと言えるのではないでしょうか。それが、「この人も」というくらいかなり全面的にオンラインに移行してしまい、権威ある団体などでも注意事項を示した上、オンライン化をサポートする始末。オフィスをシェアしている仲間に子どもを専門とするプレイ・セラピストがいますが、彼女からプレイ・セラピー(遊戯療法)もオンラインでやるためにトレーニングを受けている、と聞いたときには、驚いてしまいました。子どもこそ、それこそ「身体」「空間」「物体」のある「リアルな」場所に生きている、という思いがあるからです。

それに比べれば主に言葉、対話を使う大人のカウンセリングや心理療法など、オンライン化に馴染みにくいとは言いがたいようには思います。幸い、オープンマインドでは2015年の開業当初からオンラインカウンセリングも行っていたため、今回のコロナ禍では大事を受けずに済んでいるとは言えます。オンラインで2年、4年といった長期のクライアントさんがいるのもオープンマインドの特徴ではないかと思います。

それだけやってきて、オンラインカウンセリングに効果はあると実感してはいるのですが、その一方でオンラインでは実現できないもの、足りないものを感じていないわけではありません。オンラインを好む(あえて選ぶ)人は、実際の場や、同じ部屋に存在する人や身体、そこで形成される人間関係を少なからず回避しているのでは、という懸念はあり、当初からそれは変わっていません。

対面のセッションでは、まずクライアントさんは電車、バス、車などで移動してきて、多少なりとも歩き、玄関ドアを開け、待合室で待ち、こんにちはと言いながらドアを入ってき・・・といった「プロセス」、いわば「旅」があります。が、オンラインセッションでは大半のクライアントさんにとって、自室から動くことなく(むしろ場合によっては出先から自室に戻って)まさしくワンクリックのようにしてセッションが始まります。通常、セッションの前後にあるゆるみというか、移行というかがほとんど存在しないのです。

対面である程度の期間、カウンセリングや心理療法、あるいはスーパービジョンなどを受けたことのある人なら分かると思うのですが、セッション直前にあれこれ考え巡らすこと、立ち去りながら考えること、といった「スペース」がない、というか、自室と連続している状態にオンラインの場合は置かれると言っていいのでしょう。

コミュニケーションや言葉についても同じで、「遊び」がないというか、対面であればもっとしぐさや空間に向けられる意識が、いわばそぎ落とされてお互いの発語にだけ向かっている感じがあります。それでもオープンマインドでは、これまでの経験からそうした「遊び」「ゆるみ」をなるたけ持たせるようにして話を聞いている、とは言えるかと思います。

仮に仕事がかなりの比率でオンライン化したとしても、オンライン化し得ない領域や仕事があります。単身赴任、遠距離恋愛(結婚)といった例外はなくはないとは言え、家族、恋愛、結婚、親子、子育てなどは「オンライン化」しにくい部分です。家族や恋人たちはリアルな空間を共有しています。また、医療、介護、教育、保育、サービス業の多くの部分などもやはりオンラインでは成立しにくいでしょう。そうしたオンライン化しにくい部分での親密さ、ケア、コミュニケーションなどが、まさしくオープンマインドがサポートし、改善するお手伝いをしていきたいと思っている分野なのです。

今後も、オープンマインドはオンラインでのサービスも提供していきますが、それは上記のように対面の、空間や身体を共有した状態も大切であるとの信念に基づいたものとなります。そのため、オンラインと対面はオープンマインドのサービスの両輪となっていくことでしょう。