2020年08月25日

アンヘドニア(無快感症)をもたらす、コロナ禍

今年のコロナ禍で、気になることはいろいろありますが、心理・メンタル面から見ると「楽しみが得られない」というのは気になります。元来、実際手に入るか、コストはどうかといった点でまったく制約がないとも言えないのですが、現状旅行、レジャー、食事、社交、娯楽など、通常手に入るものが手に入りにくくなってしまっているため、仮に意識的にせよ無意識的にせよストレス発散したい、なにか楽しいことをしたい、と思っても、できなかったり、また感染の不安からあきらめてしまったりすることが多いのではないでしょうか。

それも、限られた期間まだならいいのですが、すでに3月から数えても6ヶ月を超えようとしています。うつ(この場合は「大うつ」)の症状の一つにアンヘドニニア(anhedonia、無快感症、場合によっては不感症とも)というのがありますが、これは楽しみや快感が感じられなくなってしまった状態です。(これだけで「うつ」と診断されるわけではなく、あくまでいろいろな症状の一つです。)元々人間は人生の1年目、赤ちゃんのときに「快か不快か」をベースに世界を受け取っています。おなかが減る、寒い暑い、おむつが湿っているなど、まったく「不快」を経験しないわけには行きませんが、養育者のお世話によってその不快が取り除かれ、快が来ることの繰り返しで赤ちゃんは人間関係や信頼を形成し、また情緒も安定していきます。うつの傾向のある人はなんらかの形で自分や世界を「快・不快」(「白か黒か」「好き嫌い」「全か無か」でも)に二分してしまっており、特にうつ症状の強いときにはまったく「快」(楽しみ、楽しさ)の側にアクセスできなくなってしまっている場合もあります。

また、うつに落ち込まないための手立てであるとも言えますが、フラストレーションを暴力やハラスメントのような形で解消せざるを得ないダイナミックスが生じてしまっている人も、少なくないのではないかと思います。今のような状況下であっても、できる範囲で楽しいことをする、また不安やリスクを勘案した上で楽しみを追求していくというのは、メンタルヘルスや円滑な人間関係のためにも大切なことです。

こうしたことも考えると、あまりに自粛自粛と言うのはどうかとも思います。日本人は一般に欧米人に比べそういう外部からの指示などを内在化しやすく、また強く取る傾向があり、自分から打ち破ることが難しいという傾向を考えると、自粛しないでいい段階に来たときには、それを「破っていい」という明確なメッセージを発し、かつインセンティブがないと(GO TOキャンペーンなどもそうかと思いますが)、「自粛したまま」という状態がつづきかねないとも言えます。そうなると個人にとっては出口のないうつや不安の状態がつづき、社会的には経済へのマイナスのインパクトがつづいてしまうでしょう。

制約の中でどう楽しみを見つけたり、実行したりしたらいいか分からない、ストレスが溜まり自分に合ったストレス対処法が知りたい、うつ的傾向が高まっているのでなんとかしたい、といった方はいっしょに方法を考えることができますので、ぜひ一度ご相談ください。