2021年04月03日

コロナ禍のメンタルへの影響は?

いつから、と言うのも難しいかもしれませんが、コロナ禍、あるいはコロナによる自粛が始まってもう1年以上が経ったと言えます。世の中はそれなりに適応し、平常に近い状態で動いている部分も多々ありますが、同時に深刻な影響を受けてしまったという方々も少なくないのではないでしょうか。そうした方々には、お見舞いを申し上げます。

さて、アメリカ心理学会(APA)の機関紙に『アメリカン・サイコロジスト American Psychologist』というのがありますが、その最新号にコロナ禍がメンタルにどのような影響を与えるかについての論文が載っていましたので、ここで内容をざっくりとシェアしたいと思います。

ドイツの研究者Hannes Zacherとアメリカの研究者Cort W. Rudolphによる論文ですが、コロナ禍で主観的なウェルビーイングに影響を与えているのは、どのようなことかということについて調査を行いました。ここで言う主観的なウェルビーイングとは、人生の満足度、ポジティブな感情、ネガティブな感情の3つに別れていました。コロナ禍をどう受け取るか(appraisal)と、コロナ禍やそれに関連した状況をコントロールできるものと思うかどうか、またコーピング(対処)として、自分でできるものをやるか、人からサポートを得るか、それともお酒やドラッグなど、回避する(ごまかす)方法を取るか、といった人々の考え方や行動と、主観的なウェルビーイングとの関係が調べられました。

主にドイツでのことではありますが、やはり昨年(2020年)3月、5月あたりは主観的なウェルビーイングが下がったという人が多かったようです。まだまだ分からないことも多く、特に欧米ではロックダウンはじめさまざまな積極的手段が試みられていた時期です。研究者たちの予想に反して、コーピングはあまり関係がなかったようですが、コロナ禍やそれに関する状況をコントロールできるかどうかや、脅威でなくチャレンジであると感じることは、ウェルビーイングとのプラスの関連があったようでした。

さらにやはり脅威であり中心的であると感じた場合、ウェルビーイングは低く、特にネガティブな感情との関連が強かったようです。これを解釈すると、コロナによる脅威を強く感じ、「自分にできることはなにもない・・・」のように受け身になってしまうと、ウェルビーイングには良くないということでしょう。対して、コロナ禍自体をすぐに「撃退」することなどはできないにしても、自分にできることをやっていこうとする姿勢(感染予防や免疫力増進、コロナによって変わった生活スタイルを利用したり、これまでのやり方を変えて満足を得ようとするなど)は、ウェルビーイングにプラスに作用するということでしょう。

わざわざ言われるまでもない、という結果のようにも思えますが、やはりどうにもならないように思える状況の中で、できることをやっていくこと(捉え方を変える、といった内的なものを含め)が大切であることが、あらためて浮き彫りになるかと思います。コロナ禍は「終わった」とはまだまだ言えない状況です。長引いていますので、息切れしないように対処していきたいものです。

参考文献: Zacher, H. & Rudolph, C. W. (2021). Individual Differences and Changes in Subjective Wellbeing During the Early Stages of the COVID-19 Pandemic. American Psychologist, 76, (1), 50-62.