2021年10月06日

女性のライフサイクルと40歳前後の「焦り」

オープンマインドでご相談をお受けしている方たちの年齢層ですが、広く見ると10代~60代と広いものの、中核となっているのは30~40歳くらいの女性の方たちかと思います。男性にも年齢による変化や制限はありますが、特に女性には明確なライフサイクルがあり、それは結婚・出産・子育てなどに関することです。「可能性」としてであっても、最初の子どもを産める年齢というのは今の進歩した医学でも40代前半くらいまでです。となると多く女性はそれがまだである場合、「それをしたいだろうか? できるだろうか?」と意識的・無意識的に問うことになります。

以前は結婚し子育てするのが当たり前、という時代だったのですが、最近は女性の選択権、つまり結婚しない、産まないという選択権ももっと認められていると思います。それでも「焦って」しまうことが多いのは、一つには生物学的なもの(身体的に、そのメカニズムを持って生まれてきて、それを使わないといったような・・・言い方が難しいのですが、通常女性に生理があるように、「身体の本能」とでも言うべきところでしょうか)が一因なのではないかと思います。

このような、出産(再生産)に関する決定・選択は「再生産に関するアイデンティティ reproductive identity」と言われ、権利(再生産に関する権利、reproductive right)としても認められていると言えますが、社会的な認知は、まだまだ十分でないとも言えるでしょう。

仮にそのように社会全体の考え方が変わってきているとしても、親や家族、育った環境、地域などの影響で「結婚して子どもを持つのが当たり前」、「結婚して子育てするのが女の幸せ」のように固く信じ込まされている場合も少なくありません。この場合、頭では自分で選択する余地はあると分かっていながらも、ほとんど「結婚しない(生涯独身でいる)」、「子どもを持たない」という選択肢は不可能であるというくらいに信じている人もいます。その上でそれが実現していないとなると、罪悪感や不全感を抱いたり、最悪自分の人生に価値が見いだせなくなったり、絶望的になってしまったりすることもあります。

身近な人(友だちや姉妹など)の結婚や出産などをきっかけに急に焦り出すという人もいます。遠い人のことと思っていたのが、身近で起こるとより切実に感じられるのでしょう。友だちや同級生などの結婚ラッシュがあると、「人と同じようにしなければならない・したい」というプレッシャーもあるでしょう。「同調圧力」とはちょっと違うかもしれませんが、それまでのところ例えば学校や職場などで「同じようにしてきた」人にとっては、取り残されたような、どうやってその姉妹や友だちに関わっていけばいいのか分からなくなるような体験です。また、友だち関係なども、結婚したり、また特に子どもができたりすると相手のライフスタイルががらりと変わってしまい、話題もどうしても子どもや教育のことなどが中心となりがちで、独身の人からすると「話が合わない」ということにもなりがちです。

仮に結婚しなくても、子どもがいなくても自分の仕事なり生きがいなりにエネルギーを投入して自己実現を図ることのも素晴らしいことです。ただ、どうしても上記のように「結婚や子ども」をなんとなく志向したり、憧れたりしてきた女性たちにとって、頭を切り替えるのはそんなに容易なことではありません。年齢が上がってくるにつれどうしても立場や人との関わり方も変わってきます。職場などでもそうか思いますが、「世話される」、「教えてもらう」の立場から、どうしても「世話をする」、「教える・教育する」の立場へと、移行していくことが期待されるでしょう。それには挑戦していくこと、頭を切り替えて責任を引き受けることなどが必要となってきます。

パートナーがいない、メンタルの問題があるなどの理由で自分で子どもを産むことが難しいのであっても、子どもが持てないとか、子どもと関われないというわけではありません。日本ではまだまだ一般的ではないですが、養子をもらうという手もありますし、自分の子を育てないのならば教育や保育などの分野で子どもと関わり育てていくこともやりがいのあることです。そこまで大げさなものでなくても、地域のボランティアをするとか、子ども向けの商品などを作るなど、「次世代を育てる」ということに貢献できることは多くあります。

いずれにせよ、生物学的に「プログラムされた」ことに抗っていくことになるのか、こうしたプロセスは容易なものではなく、不安やうつ、迷い、混乱といった思いを引き起こしやすいのです。冒頭にいった通り、30代~40代くらいの方々に多くご利用いただいているのは、そのためかなと思っています。