アンダーアチーバー(underachiever)という言葉を、どこかで見聞きしたことがありますか?
教育の世界で言えば、知能(IQ)というのがあり、それに対し達成(achievement)があります。達成とは、成績などの、外に見える成果です。知能や能力はあるのに、それが結果や得られるものに反映されないときに才能が生かしきれていないということでアンダーアチーバー(当然到達すべきところになんらかの理由でできていない人)、と呼ばれます。アンダーアチーバーには、ポテンシャルがあるのにそれが現実に結びつけられていないのです。
なぜアンダーアチーバーになってしまうかと言うと、これまでの臨床経験から2つ理由があるように思います。一つ目は知能や能力はあるのに、周囲がそれに気づかなかったり、教育に価値を見いだしていなかったり、教育資金がなかったりということで適切な教育を受けていないというのがあります。本人がやりたいと求めても、親など周囲はやらせてくれない状況です。また、住んでいる地域などで、受けたいような教育がない場合もあります。いくら知能や才能があったとしても、開発しなければ進学や就職も難しくなってしまいます。家族にそれまでいないような才能の人が生まれてきた場合(例: 医者の家系に芸術家など)にも、この傾向はあるかもしれません。また、知能や才能があっても、周りの方がレベルが低ければ、授業ではそちらに合わせて授業や活動が行われるため、退屈してしまったりモチベーションが落ちてしまったりということもよく見受けられます。(最近「ギフテッド」として関心を集めているところです。)
2つめにはやりたいことやチャレンジしたいことはあるのに、なんらかの理由で諦めたり回避したりしてしまった場合があります。教育はどうしても親がかりになりますから、親との関係がこじれていたり理解してもらえるようなものでないと、自分の思わぬ進路に行かせられたり、あるいは面倒だとヤケを起こしていい加減な進学や進路選択をしてしまうこともあります。
どちらの理由であれ、その背景に家庭環境や親子関係の問題、虐待やマルトリートメント(子どもへの不適切な扱い)が絡んでいることが少なくないです。経済の問題が絡むことはありますが、基本親子である程度コミュニケーションが取れていれば、進路がゆがめられてしまうことや、あるいは思い通りにならないとしても話し合いの末ある程度納得しているということがあるからです。
ここに書いたような状況では、先々(大人・社会人になってから)自分の能力・才能ややりたいことと環境とのミスマッチを生みだしやすく、該当する方は非常に多くカウンセリングや心理療法に来られますし、カウンセリング・心理療法で扱いやすい領域であるとも言えます。中には、ポテンシャルより収入や報酬が低いところに安住してしまっている人もいます。一度はまってしまったところを抜けるのはそれなりに大変なのですが、「ズレ」やミスマッチがあることに気づけば、徐々に軌道修正をしていくことが可能になり、より満足の行く方向へと仕事や人生を変えていけることになります。そのようにして方向転換を図り不安や緊張が減り、より生き生きとしてくるクライアントさんを見ることは、この仕事をしている者として大きな喜びを感じるところです。
みなさんも、もしこのような状況に陥ってしまっているのであれば、ぜひ早めに軌道修正を試みてみてください。