心理療法・カウンセリング
2024年02月20日

心理療法において「プロセスを信頼する」ということ

心理療法、特に精神分析的心理療法を受ける際になにが大切か? と言えば、一つは「プロセスを信頼する」ということではないでしょうか。人はなんらかの悩みや症状などがあって心理療法家(セラピスト)の元を訪れますが、ある種の心理療法では認知行動療法(CBT)のように「症状を軽減する・取り除く」ことをゴールとしていますが、精神分析的心理療法のように、かならずしもそれだけを目指していない療法もあります。そうした療法では、粘り強くやっていき、もっと根本的な変化が起こしていくことを狙っていますが、そのためにはある程度つづけていく、ということが必要になっています。

ある方を思い出します。とても輝かしい経歴をお持ちなのですが、次々と成功し達成することが生き方となっているように見えました。しかしその結果、疲弊してきてしまったという側面もあったようです(もっといろいろあるのですが、立場上書けないので割愛します)。こういう方にとって、一見達成と関わりがなく、なにが起こるか分からない、内面や情緒(気持ち)などに焦点を当てていくようなアプローチはおそらくまったく知らないもので、そのために強く不安に思うだろうということも、推察できます。

しかしたった数回で結論を出してしまうことにより、つづけていったもっと先にあるであろう、より充実した人生や、こころの豊かさなどを得るチャンスをふいにしてしまっている、とも言えるかと思います。そして、達成至上主義というこれまで慣れ親しんだ方法でやっていくとしたら、疲弊はつづいていってしまうでしょう。

プロセスを信頼するとは、自分の慣れないものであってもおそるおそる踏みだし、探り、自分の感情や反応に注目し気づきを深め、プロセス(経過、過程)に追随していく、ということが必要になってきます。セラピストとこういう作業をしていくと、自分一人では思いもよらなかった発見や成長が起こってくるでしょう。なぜなら十分に訓練や経験のあるセラピストであれば、こういうプロセスに伴うものを知っており、場を安全にしていくことや、必要に応じて「助け舟」を出していくことなどができるからです。

とは言え、こういう探索的な作業が誰にでも向いているという風には言えないかと思います。世の中にいろいろな種類のセラピー(心理療法)が存在するのは、ある程度向き不向きや好みというものもあるからです。また、人と人の作業であるため、セラピストとの相性もあります。セラピスト側は、誰であれできるだけ効果的に助けようとはしますが、どうしてもうまく行かないとか、合わないという場合もあります。また、クライアントがやめたいと思う瞬間や、行き詰まりを感じるときが変化の起こる直前の瞬間であることもよくあります。こうしたことは、セラピーを受けようとしているけれどこれまで経験がない、という人が知っていても良いことかと思います。