身体・心身二元論・ソマティック
2024年05月16日

身体症状とこころの状態の関係とは? -ソマティックな視点

レストランやカフェなどにいると、よく健康状態や病気などの話をしている人がいます。やはりある程度の年齢以上の人が多いですが、その話題がなくなったらなにを話すのだろう? と思うくらい、そればかり話していそうな人もいます。それだけ身近な話題であるということもあるでしょう。

そんな「話題」を提供してくれる健康や病気の問題ではあるのですが、ある種の身体症状や身体的な不調がこころや心理的な状態と密接に関わっていることをご存知でしょうか? あれこれお医者さんに行ったり、検査をした挙げ句、「こころの問題」であるとして精神科や心療内科に行くように言われると、少なからずショックを受けるものです。が、別にこころの問題は誰でも遭遇し得るもので、むしろ日本のようにこころのケアやその意識が未発達なところでは、あることが不思議でないというくらいです。

こころから身体症状が来る典型的な診断としては、「うつ(病)」や「パニック障害(発作)」があるかと思います。どちらも本人はこころと身体症状の関連があるとは思っていないことが多いので、最初はびっくりされ、不信感を抱きます。が、話していくうちにずっとストレスを溜め込んできたことや、対人関係やコミュニケーションが苦手であること、感情をうまくプロセスできていないことなどが浮上してくることが多いです。そしてこれらは、やっていけば学んで身につけることができるものなのです。

「うつ(病)」と書いたのは、うつは度合いや深刻さの幅が広く、なにかのきっかけがあって一時的にうつ的になっているようなものから、しばらく抗うつ剤を飲みつつ(または薬なしで)心理療法をする必要があるもの、通常入院を必要とするような「大うつ病」まで、いろいろあるためです。また、パニック発作があるからと言って、パニック障害と診断可能であるとは限りません。身体関連としては、「不定愁訴」という、いつも身体のどこかが不調であると訴えるけれども、検査してみると原因が見つからないという状態もあります。これも心因性であると言えます。

感情のプロセスやストレスへの有効な対処などは、小さい頃から親との間や家庭などで実地に学んでくることです。ところが、親や家庭にそういう意識がなかったり、あるいは親自身もなんとかしてあげたいのだけれど自分のストレスなどで手一杯だと、そういう「学び」や経験がないまま大人になってしまい、あるとき「限界」を迎えてしまうことも少なくないのです(こちらとしては、「限界」の前に来て欲しいのですが)。

また、日本文化自体「言わぬが花」で、あれこれしゃべるよりは黙って耐えることを賞賛するようなところがあります。日本人は西洋人より「身体化」が強い、と言われています。不思議に思うかも知れませんが、同じ「問題」や「症状」には心身両面の側面があり、身体症状を口に出して話していくだけでも(そのための条件があれば)改善・解消していくこともあります。要は、「困っていることを聞いてもらう」ということの絶大な効果であると言えます。

心理療法では、こころの状態や身体症状・状態を「心理化(psychologization)」することにより、解消や改善を図っていくことができます。心理化というのはつまり、言葉にしたり、それをセラピストに伝えたり、それについての会話(コミュニケーション)があったり、また自分でも言葉にすることやコミュニケーションでそれを「了解」できる、ということです。それと言うのも、「こころ」と「外界(他者)」の間には「身体」や「感情」、「コミュニケーション」が存在するからです。感情やコミュニケーションが放置されていると、それを引き受けてしまうのが身体だというのも、この位置関係を考えればまったく意外ではないのではないかと思います。

また、話は変わりますが、こころの健康に気をつけストレスマネジメントをしていくことにより、免疫力がキープ、アップされることも知られています。こころと免疫の関係を研究する、「神経心理免疫学(neuropsychoimmunology)」という分野も存在します。生活習慣病やがんなどの慢性の病気も、ストレスやこころの状態と無関係ではないと言われています。