2018年12月17日

サイコロジカル・マインディッドネス

「サイコロジカル・マインディッドネス」
聞き覚えがあるでしょうか? もろ横文字ですが、psychological-mindednessのこと。
長いですね。仮にも翻訳を多少やる者として、カタカナのままでは申し訳なくはあるの
ですが、なんとも訳しがたいのでこのまま行きたいと思います。

仮にPMと略しましょうか。

サイコロジー、つまり心理学は、特にアメリカの中流以上では「常識」になりつつあるか、
すでになっているのかと思います。『サイコロジー・トゥデイ Psychology Today』
という雑誌がありますが、一般向けの雑誌ですが心理学の最新の動向を反映した、心理学
をどう使うか? といった内容です。

なぜかと言えば心理学を有効活用すれば、メンタルにも身体的にも健康でいられ、学業や
仕事の効率にもよく、成功していくためのメンタリティーも身につけられる、ということ
があるからでしょう。

これはある意味、理想化された心理学の一側面でしかないとは思うものの、そう使って
いけば、心理学は使えないこともないという側面があることも事実です。

要は心理学の素養があるなしで家族、パートナーシップ、仕事、人間関係、健康など
人生の重要な領域の善し悪しが決まってくる、というのはある程度真実でしょう。

中でも個人(またはカップル、家族・・・なんでもいいのですが)である程度以上の期間
セラピーが受けられた人は幸運だと思います。セラピー(カウンセリング)って病気の
人のためのものじゃないの? という超えも聞こえてきそうですが、そればかりではなく、
自分の資質や才能、条件を最大限に生かすためのツールとも言えるのです。

アメリカ(特に私の学んだニューヨーク)ではとうにそういう使われ方がされていますし、
また仮に病気(診断、障害、なんとでも)があったとしても、それを逆転して飛躍していく
可能性が、セラピーのプロセスの中には秘められています。

本来精神分析や心理療法の領域から来た知識や経験は、いまやいろいろなところで使われ
ており、入手可能です。例えばセミナー、コーチングなどもそうですが、ある意味「薄味」
であり、その人その人におあつらえ向きにしたものではあり得ません。セラピーのプロセス
である、「出会った人(カウンセラー、セラピスト)との関係を築きながら、人生や人間
関係を動かしていく」ということには本当にユニークなものがあります。

例えば、カウンセラー・セラピストとしての「私」は万人向けの人ではないし、またそう
ある必要もないと思っています。世の中に多くのカウンセラー・セラピストがいるのは、
一つにはそのためでもあります。ただし玉石混淆ですし、自分の痛みや傷を人(お客さん、
クライエント)を通じて癒やそうとしている(意識的というよりは無意識的に)人も多そう
なので、ご注意を!

なにかというと、十分に心理学や心理療法の素養があるカウンセラー・セラピスト
(すなわち、サイコロジカル・マインディッドなカウンセラー、セラピスト)とのワーク
は、そのやり取りを通じて自分もPMを学ぶことになります。いわゆる「本を一冊読んだ」
とか、「大学でその科目の単位を取った」的なまとまった知識とは違いますが、実践の
中で身についていくものがあるのです。

ところで、先ほど「中流以上」と書きましたが、もちろん、心理学は経済的に十分で
なかったり、困窮している人たちにも必要なものです。貧困は、多くメンタルヘルスの
問題と密接に結びついていることは日本ではあまりまだ認識されていません。実に残念な
ことですが、PMはあらゆるレベルの人に必要とされているのです。

PMは、グローバル化という点でも重要です。日本で得てして国際化・グローバル化が
「英語」という面でしか考えられていないのは、まさしくPMが十分に浸透していないから
だと思われます。PMをある程度知って、あるいは身につけて国際社会に出て行くのと、
そうでないのとでは当然にしてストレスや順応のプロセスも違ってくるでしょう。
日本が移民社会化していく流れを考えてもPMはますます重要になっていくと思われます。

それでは、サイコロジカル・マインディッドネスのコア(核)となるのはどんなことなの
でしょう?

・自分の感情が分かる
・自分で考えることができる
・自分の感情や考えから、有効に行動に移す(または何もしないことを選ぶ)ことが
できる
・自分を表現でき、必要に応じアサーティブである
・コミュニケーション力があり、人間関係を円滑に運ぶことができる
・自分が何者か(アイデンティティ)を理解している
・ダイバーシティについての理解がある
・ストレスに対処していくことができる
・創造的な解決を図ることができる
・人間関係やグループについてのダイナミックスを理解している

「できる」「分かる」「理解している」などと言っても、程度の差はあると思いますが、
これらがある程度身についていればその人は「サイコロジカル・マインディッド」で
あると言えるのではないでしょうか。言ってみればお金やファイナンスの知識がある
なしがその人の「経済的豊かさ」に影響するのと同様、PMを身につけているかどうか
はその人の「こころや人生の豊かさ」を変えていくと思われるのです。